2016年9月21日水曜日

コンビニ人間 村田沙耶香 を読む。

DSCN9932

社会のために、コンビニ人間だったり、警察人間だったり、洋服販売員人間だったりを何十年も演じ続けることは正しいのか。
生きる目的は遺伝子を残すことだけなのか。
正しいとか間違っているとか、はっきり言えないことが社会の暗黙の了解には存在する。

芥川賞を受賞した、「コンビニ人間」を読む。
今回はハードカバーを買うのではなく、掲載されている文藝春秋を買ってみる。
初めて買ったけれど、活字中毒の人が一ヶ月かけて読むにはぴったりな超ボリュームな雑誌となっている。
内容も偏りがあるわけではなく好き勝手なことが書かれている。
結構面白い。

「コンビニ人間」に関しても、芥川賞に選出された理由や、受賞の言葉などのバックグランドが掲載されていて、より深く「コンビニ人間」を読むことができる。
コンビニ人間を書いた村田沙耶香さんは、作家としてデビューしながら、コンビニの店員として働いているらしい。レジ打ちなんか(失礼)している人にクリエィティブな人なんかいないと思っていたが、大きな誤解だった。世の中にはいろいろな人がいる。

小説の方は、別に主人公の職業はコンビニではなくても警察官や小学校の先生でもなんでもよかった。
現代社会としては一番虐げられているアルバイトであり、さらりありふれた存在であるコンビニを選ぶことで、〇〇人間度を際立たせることになっている。
社会の歯車として働いている様を〇〇人間と称している。

主人公は、35歳か36歳 未婚で独身。そして彼氏もいない。
コンビニで働くことだけが社会の接点となっているらしい人。
社会の暗黙の了解を感じることができずに大人になってしまったため、現在の状況に特に不満を抱いている様子はない。ぼくがコンパまみれだった頃、結婚している人たちとの溝は深まるばかりで、この本の言うところのこっち側度が高まっていったのであった。
最近、その頃のデータをサルベージしたのだが、精一杯努力はしていたことが伺える内容だった。

さてこの作品、こっち側(現代社会の暗黙の了解、会社組織に所属して、結婚して、子供を作るという形を取りたくない人々)からあっち側に行くために偽装結婚をしようという話だった。あーこういうアプローチなら、40代でも結婚を視野に入れて婚活できそうだ。
物語は、「どーなるねんこれから?」みたいな終わり方をする。
続編も期待できる内容であるが、読後感はすこぶるいい。
やっぱり殺人事件が起きて、犯人が誰かを突き止めるより、社会の違和感をあぶり出して、面白おかしく描く方がぼくは好きだ。

文藝春秋はとても分厚いけれど、この「コンビニ人間」は全文掲載しても10%ぐらいしかない。ハードカバーを買って読むと、1冊読んだという達成感があるけれど、文藝春秋で読むと1コーナを読んだだけで、とても短く感じる。
達成感はそれほどない。欠点といえばこれが欠点になる。
電子書籍も出ているけれど、電子書籍だと適当に開いて読むつまみ読みができないため、この雑誌に関しては電子書籍には向いていない。
これからも文藝春秋を電子書籍として買うことはない。

そういう方向で。

芥川賞受賞作、村田沙耶香「コンビニ人間」はここがスゴい!他候補作も合わせて一挙にレビュー。
http://pdmagazine.jp/works/akutagawa-155/

芥川賞「コンビニ人間」村田沙耶香さんインタビュー
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712614.html

0 件のコメント: